種子骨々折のウマ

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調教中に骨折した種子骨。種子骨は血液供給が非常に少ない。
手根骨の板状骨折などと同様に骨折すると非常に治りが悪い。
おまけに種子骨は靭帯で上下から常に引っ張られているので更に癒合が遅い。
手術まで骨折の離開防止のためにキムジースプリントを装着した。

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今回はスクリュウを遠位、即ち下から上に向かって入れることにした。
キムジースプリントのお陰で、骨折はほとんど開いていなかった。
腸骨より海面骨を採取して、骨折面に埋め込んで、治癒を促進。

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今回は調教師の希望で、レース復帰が予定されている。
今後は、磁気治療やショックウェーブで早く治癒することを願うばかり。

馬の後肢の跛行と診断麻酔

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【この写真は別症例】

当クリニックでは,跛行診断で年間多数の診断麻酔をやっている。
さすがに後肢は少ない。
今回は再入厩時より左後の跛行が良くならず、
触診で異常が分からない競走馬に診断麻酔をすることにした。
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【本症例とは別のウマの神経ブロック】

競走馬の場合、跛行の原因のほとんどは、
前肢なら腕節以下、後肢なら飛節以下とされている。
これは世界の常識であるが、掟破りのウマ獣医は多い。特に日本では!
このウマは、触診、レントゲン検査では、どこも異常は無い。

最初に飛節の遠位の関節(足根中足関節)を麻酔するも跛行は変わらず。
次に外側踵神経をブロック。変わらず。

翌日、脛骨神経、腓骨神経をブロック。
速歩で跛行が半減する。これで、跛行の原因箇所が飛節以下とわかる。

検査3日目。
トレセンから牧場に出す前に原因を知りたいと、
調教師の強い依頼で飛節の残り2カ所に関節麻酔。
足根間関節でやっと跛行が80%近く消失。

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今回の症例は、調教師の強い希望で最後まで検査をすることができ、
原因箇所が特定できた。
跛行診断で診断麻酔を厩舎で実施する時は、原因をはっきりさせ、治療をし、
しっかり直してレースに使うという調教師の気持ちがないと、
時間をかけた診断、検査は出来ない。
難解な検査が獣医師のスキルアップにもつながる。

○○調教師ありがとう! 最後まで検査ができました。