跛行した乗馬2頭

昨年の9月に北海道の競技で障害飛越後に右前の跛行をした14歳の乗馬。
以来跛行が治らないため数人の獣医師が診察。診断麻酔をし球節ではなく蹄と診断する獣医師,レントゲンをみて繋に骨膜があるのでショックウェーブをする獣医師。いろいろだ。十人十色?

IMG_4343  跛行はロンジングで円の外に足があると跛行が増悪した。当初繋靭帯炎を疑ったが球節にあらためて麻酔をすると跛行は消失した。あら意外と簡単。良かったね。
レントゲンを撮ると、驚いた事に第1指骨にbone cystがあった。めずらしい。

P1270753P1270754

写真では薄くて分かりにくいが正面からも横からも薄く黒い骨嚢胞が写っている。あぶなく見落とすところ。
関節にトリアムシノロンをいれたが、跛行は再発した。やはり手術が必要。
5.5mmのドリルで穴をあけて、内部を掻爬し再びトリアムシノロンをいれるか、それとも4.5mmの螺子でシストを固定するか、選択は悩ましい。
IMG_4355もう一頭のウマは騎乗中、突然左後肢がつけない様な跛行をするというので見に行った。最初はなかなか跛行しなかったが、突然確かにつけないほどになった。
触診しても反応は無かったが繋靭帯にわずかな痛みがあった。一応LOW4で麻酔をしてみた。なんと跛行消失。むむむ!
球節のレントゲンをとってみると・・・

IMG_4223あらびっくり!
第1趾骨に大きな骨片。まるいので以前からあった様だ。
最近、突然関節にひっかかる様になったのだろうか。
確定診断はここの関節に麻酔をすることだが、二度目の訪問では跛行しなかった。
確定診断が出来るまで手術は延期となった。

きれいなレントゲンを撮れば分かること

画像診断はきれいな画像で診断することが基本だ。当たり前だが・・・。
レントゲン診断では正しい角度、そして、現在ではデジタル化しているので、きれいな画像を得るには十分な線量、そして適切な画像処理が必要だ。これがほとんどの獣医師が残念ながら間違っている。というか全く知らない。

IMG_0064.JPG話題のDR(Direct Radiography)も国産メーカー各社から出ているが、付属のパソコンと画像処理がひどくて、野外では、ほとんど使い物にならない。ここ数年何度もメーカーに言っているが、あほんだらの日本の会社は改善しようとしない。
IMG_0066日本のフラットパネルはOEMで海外で数多く使用されている。あちらではパソコンと画像処理がちゃんとしているので、野外の診断に耐える画像を提供している。
日本のDRはガラパゴスDRだ。

IMG_1403富士のDRだってアメリカじゃ画面も大きいし、こんなにきれい。とほほ!!

IMG_4059 さて、今回いつものように、きれいなレントゲンを撮ったら、見落としてしまいそうな骨折がわかった。
2週間前からの跛行が悪化して関節液がパンパンになり歩けなくなった競走馬。
FCRの右画面の強調処理でフィルムで出力するのが、今でも最強の画質になる。フィルムはすごい!
ぱっと見異常はないが、よく見れば関節面がわずかにはがれている。これは痛い!
球節をちょっとでも曲げると飛び上がるほど。速歩はほとんどだめ。
IMG_4061同じウマの写真。きれいな真横でないと骨折は分からない。
IMG_4060掌側関節面を強調した正面からの撮影でも、はがれているのを確認。こりゃ痛いね。
IMG_4063角度が合わないと写らない。

この症例は、このままでは、跛行が続いてしまう。剥離した骨片を取りたいが、関節鏡や関節切開を検討したが、球節を前から攻めても後ろからやっても、ちょっと届きそうもない。どなたか名案は?

IMG_3883今年の日光は大雪。懐かしのウニモグ大活躍。

老齢馬の浅屈腱断裂

昨年夏、放牧していた22歳のハノーバー種の乗馬。突然右前足の屈腱が腫れた。エコー検査で1a1bに重傷の屈腱炎が分かった。
放牧だけしかしていない乗馬がこんな重傷の屈腱腱炎になる理由が分からなかった。

IMG_3981 初診時のエコー。
浅屈腱の中心が完全に黒く抜けている。屈腱炎はウマが走っているときに腱の中心の温度が高くなるので中心にダメージが起こりやすいと言われているが、休養していても中心が悪くなるのは不思議だ。

IMG_39793ヶ月後の秋まで症状は休んでいるにもかかわらず悪化していった。痛みは増し、横になることも多くなった。再度のエコー検査で屈腱は更に悪化した状態になっていった。

IMG_3980こりゃひどい!断裂状態!反対の足も同じ様に腫れてきた。

IMG_3824なんと、2月に行ったら両前の球節が地面に着きそうになっていた。前足の浅屈腱が断裂してこんな風になったようだ。
ちなみに、繋靭帯が切れると球節は完全に地面について、立っていられなくなる。

こんな事があるのでしょうか?
そこで見つけたのがこれ。

2014 AAEP PROCEEDINGS.  P.257
Spontaneous Rupture of the Proximal Superficial Digital Flexor Tendon:
A Clinical Syndrome in Aged Equids

IMG_3779富士山の火口って上から見ると意外と小さいね。

陰睾のウマ2

IMG_3520去勢の依頼があった3歳競走馬。見た目はカタキン。ありゃ。
左の睾丸は小さいけど触れた。あー良かった。でもこれじゃ野外でケタミンで寝かせてやるのは、ちょっと難しい。全身麻酔で仰臥にすると反対より小さいが、意外と大きい。それでも、小さいとしっかりつかんで切皮するのは結構やり難い。

IMG_3525小さいけどヘンダーソン式でねじ切って切除。もっと小さいと挫滅鋏を使った方が良いかも。

IMG_3529反対側はちょっと大きい。この位大きいと陰嚢も切皮しやすい。

IMG_3533反対側の普通?のやつと比べると大きさが良く分かる。小さいね。IMG_3466大量の桜とクヌギ。宝の山。2年後の我が家の暖房。
こりゃ腰痛くなるよ!

診断麻酔の順序

2歳の競走馬が右の第3中手骨を骨折した。

P1260001この位の骨折だと日本では相変わらず手術をしないでギプス固定を選択する例が後を絶たない。手術費用を惜しんで手術を選択しない気持ちは理解できない事も無いが・・・。

P1260002結果的に2ヶ月後、ほぼ骨折は治っている。もちろん軽い運動も可能。保存療法では6ヶ月は経過しないと完全にはくっ付かないだろう。途中、骨折線が更に開けば休養期間は延長。手術をすれば預託料も軽減できるし、レースの復帰も早い。獣医師にもあまり理解されていないような・・・・。

注:下の螺子は短いのを選んで入れています。

DSC041533ヶ月後、運動を開始。球節の外側が少し温かかったが、調教を開始した。

DSC04157調教を始めたら、右前が跛行した。明らかに手術をした右前。レントゲン写真をみても、螺子の長さをふくめ痛そうな感じないですけど!
しかし球節の屈曲試験で跛行増悪。やっぱりピンが痛い?そこで、診断麻酔を球節から始めてしまった。跛行は改善しなかった。
蹄鉗子の反応はほとんどなかったが、とりあえず次に蹄球の直上で神経をブロック。

DSC04155麻酔は良く効いている。ボールペンで刺激しても反応無し。

速歩では跛行が消失した。球節の屈曲痛も消失していた。???
球節の麻酔から、少し時間がたっていたので関節内の麻酔薬が関節周囲に浸潤して、靭帯や神経が麻酔されて跛行が消失したのか、それとも単純に蹄が痛いのが神経ブロックでなくなったのかが分からなくなってしまった。
関節の麻酔は、そこが独立しているので、ほかの組織や神経に影響が無い様に思えるが、時間の経過とともに周囲に麻酔薬は染みて行く。関節の麻酔をして30分も40分もたってから歩様を診るのは診断を間違えてしまうかもしれない。
今回は10分くらい。
幸い、この症例は、蹄鉄を装着したところ、翌日から無事に調教を続ける事ができた。はだしで痛かったのね。
もし、装蹄をしても跛行が消失しなければ、螺子を抜くつもりだったので一安心。

IMG_2961 旭川では有名なジンギスカンの店、大黒屋。肉は美味かったけどタレがちょっとね・・・。リンゴのすりおろしが入ってないとダメだね。

IMG_2965すごい煙。夕方の5時を過ぎたら、あっという間に満席でした。

外傷にドレーンを付ける

大きな外傷や血腫にはドレーンを装着すると腫れが早く消失する。
昔は排液する穴にガーゼを良く入れたが、ガーゼが栓の役目をしてかえって液が溜まってなかなか治らない。『抜き通し』なんていうガーゼを2箇所の穴から通して外で結ぶなんてことも大昔はやっていた。今でも???
滲出液はドレーンを入れる事で、常に排出されて溜まらないので早く治る。     特に腱鞘の外傷の縫合には絶対にドレーンを装着しないと縫合部は腱鞘液で過度に湿潤して、うまく癒着しない。


SANYO DIGITAL CAMERAこんな絶望的な外傷は縫合しても、絶対に滲出液がたまって縫ったところはくっ付かない。絶対ドレーンを装着。

SANYO DIGITAL CAMERAこんな感じに入れると、この周辺はうまくくっついてくれる。

P1150462ちっちゃい傷にもドレーンを入れると安心?

P1150463ドレーン好きなので入れちゃいます。

IMG_2496臀部の血腫には絶対必要。

IMG_2371前腕の汚染していない外傷も大きく縫合する時にはドレーンがあれば安心。
IMG_2377素晴らしい!この上から包帯をすれば完璧。
DSC04130今日は日テレのヘリが来ていた。左は茨城県の防災ヘリ。
DSC04138川をまたいでいる上の方の道路はもうすぐ完成する圏央道。これが完成すると、つくばから関越につながる。早く作ってくれ!
DSC04142今日のフライトは台風一過。雲の下に虹を発見。

陰睾のウマ

レースで止まってしまう事がある3歳の牡馬。調教師より去勢の依頼があった。
年に何回か睾丸が外から見えない陰睾の去勢を頼まれる。ほとんどは内股を慎重に触診すると大体は鼠径部の奥に小さな睾丸を触る事が出来る。今回は残念?ながらそこにはなかった。
手術当日キシラジン200mgで鎮静し直検をする。右側の鼠径輪周囲に何か小さな睾丸?触知。こりゃ腹腔内確実でしょ。

DSC02739鼠径部を切開。内部を探ると副睾丸らしきものを発見。

DSC02745 総鞘膜と思われる膜を切開すると中から副睾丸のTail出現。これさえあれば後は睾丸を引っ張りだすだけ?

DSC02748

睾丸につながる靭帯をいくら引っ張っても、深鼠径輪にひっかかって腹腔内にある睾丸は出て来ない。何しろ穴より睾丸の方が大きい。引っぱりすぎて靭帯が切れると潜伏睾丸が行方不明に。

DSC02755

 深鼠径輪を切って広げると縫合が面倒なので、指をつっこんだり、引っ張ったりといろいろやっているうちに、やっと睾丸さまの登場。

DSC02757これで全部。あとは切るだけ。

DSC02767反対側の睾丸と比較すると結構小さい。でもホルモンはしっかり出るぞ。潜伏睾丸は挫滅、結紮して切除。対側はヘンダーソンで摘出。
疲れるね。陰睾。

IMG_2374つくば市で最近歩道橋にかかっている意味不明のスローガンのひとつ。『つくばホンモノ』
奥が本物のタイルの歩道。手前はタイルが破損したのでアスファルト舗装してタイルに似せて塗装。タイルからアスファルトへ!さすが、つくばホンモノ!

繋靭帯炎の競走馬のエコー

春の大きなレースに出走した3歳サラブレッド。競走後に跛行し競馬場で
レントゲン検査を受けたが、骨には異常がなかった。跛行は左前だったが
トレセンに帰厩後はなおっていた。右前の屈腱部の皮膚に血管が走っているので、エコー検査を依頼された。始めに浅屈腱をスキャンするも異常はない。
次に繋靭帯をスキャンすると驚いた事に上から下まで真っ黒。
触診では、腫れも疼痛も感じなかったが、こりゃ重傷です。

IMG_2499分かり難いが、オレンジの線で囲ったところが繋靭帯。中心が黒く抜けている。
繋靭帯炎のエコー検査は慣れていないと結構難しいが、これなら誰でも分かるでしょう。
繋靭帯炎のエコー検査は特にフォーカスを繋靭帯にあわせて撮らなければ正確な診断は不可能。触診で分からなくても繋靭帯炎のウマは沢山いる!

繋靭帯炎の競走馬

跛行の原因の90%以上が下肢部だと言われているが、日本では非常識である。
獣医も調教師も助手も厩務員も肩や腰の筋肉が痛くなって跛行すると思っている。
残念ながら、これは日本だけの特殊なことである。お陰で、いつまでたっても日本では筋肉注射、鍼治療のオンパレード。その結果、分からないのでササバリ!

IMG_2212  今回もそんなウマが栗東から来た。3歳牝馬。栗東では跛行して肩が出ないということで、肩周囲にお決まりの筋注を受けてきた。
速歩では、筋注を受けた反対の足が跛行していた。繋靭帯の近位付着部周囲は明らかに圧痛と腫脹がある。こりゃ痛いでしょ!

IMG_2221エコー検査では、明らかにひどい繋靭帯炎がわかる。こんなにひどいと触るだけで分かるんですけどね・・・・・。長期休養。

ヘイゾウ 優勝おめでとう 内地では初。

ヘイゾウ号は昨年の10月、調教後小腸が陰嚢に入り込む陰嚢ヘルニアを発症。緊急オペをした。

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左手でつかんでいるのが回腸。押し込んでも入らないので、腹腔に手を入れて中から
引っ張ったが鼠径輪が小さく入らない。なんとか鼠径輪をメスでひろげて腹腔内に
引っ張り入れたが・・・・・。
IMG_1019回腸は結構色が変わっていたので、切除することにした。壊死した部分は絨毛がとろけていた。その後、無事に大井競馬場に帰厩し3走目の4月21日のレースで1着になった。北海道では開腹手術の症例が多いが、内地で腸管を切除した馬が優勝したのは多分初。ヤッター!!